Group exhibition 「エンドレス・ミトス」



《Black state [1/2 scroll]》 2020  モーター、アクリル樹脂、ファブリカ村でもらった糸、木材、ペンキ、他





《Black state [untitled]》2020  モーター、ファブリカ村でもらった糸、木材、ペンキ、他





《Revers time perspective [super delay]》2020  時計ムーブメント(逆回転)、ファブリカ村でもらった糸、木材、ペンキ、他




《Hole state [water wheel]》 2020 
アクリル絵具、ファブリカ村でもらった布






《Hole state[carving sculpture]》2020  アクリル絵具、ファブリカ村でもらった布





《Hole state [portrait》2020  アクリル絵具、ファブリカ村でもらった布







 僕は普段、回転する作品(モチーフを高速で回転させる) を作っている。回転させる理由はその見ているものの対象を 残像化させ、不確かなものにするためだ。今回の作品は、そんな木地師たちが、轆轤(ろくろ) を引きながら見ていたで あろう、回転しながら“浮かび上がる形” についてである。
  この作品とともに説明したいのは、木地師に由来する手引 き轆轤と呼ばれる技術についてである。紐が巻きついた装置 であり、加工したい木材を軸に取りつけ、紐を引っ張ること で軸を回転させ、木材に刃をあて削っていく。現在で言うと ころの旋盤のような技術であり、時代や地域に応じて、足踏 みで回転させたり、水車を動力としたりとその技術は変化し つつ柔軟に受け継がれてきた。
 この木地師の技術には、惟喬親王(844 年-897 年)と呼ば れる人物の物語が大きく関わっている。近江国蛭谷(現:滋 賀県東近江市)で隠棲していた惟喬親王は住民に木工技術を 伝えたとされ、現在も同地域で祀られている。その逸話として、惟喬親王は法華経の巻物の紐の原理を知り、巻いた綱を引いて軸を回転させる手引き轆轤を発案したとされている。ただし、この物語は史実としては定かではない。この物語は木地師、および木地師の文化発祥の地に技術とともに受け 継がれてきた。この“不確かな物語” に私は興味を惹かれる。
 木地師の盛衰は様々に日本全国にその技術を伝え、今世ま で継承してきた人たちもいれば、その技術も血脈も失われていった地域もある。それでも木地師の歴史をつなぐ糸は、不確かな物語を形作り、同時に強固なイメージをあらわにする。 おそらくそれは、回転する残像を対象に、そこから形を捉え ようとする木地師たちのもう一つの技術である。 手引き轆轤は紐を自分の手で引っ張ることで、対象を回転さ せる。そしてその紐は、糸が寄り合ってできたものでもある。 私たちの手によって引かれるこの縒られた糸のその先に揺ら ぐものの姿を捉えようと思う。 (小宮太郎)






VR用記録画像